『風になりたい』 (詩集) 1998年 新風舎 http://www.shinpusha.co.jp ※上記サイトで販売していましたが新風舎破産(2008.1.19朝刊)のため
ご注文者様にご迷惑がかかるといけませんので、しばらくの間
ご注文は当ホームページの
「お問い合わせ」メールアドレスに直接お願いいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
『風の街から 詩篇 青い海のために』 (短編小説と詩) 2006年 新風舎 http://www.shinpusha.co.jp
※上記サイトで販売していましたが新風舎破産(2008.1.19朝刊)のため
『晩秋』 (短編小説) 2006年12月執筆
※クリックして読んでいただければ嬉しいです。
『たみと白っち』 (短編小説)2007年1月執筆 ※クリックして読んでいただければ嬉しいです。
『詩の便り』
『朝』
現実を受け入れる
言葉にするとそんな単純なこと
でもとっても難しかった
秋の風が届く
焦げた夏の傷跡を
さらりと渡っていく
わたしは池のほとりで
すっかり変わってしまった景色を見ている
孤独を
認めたくなかっただけなんだ
馬鹿ね
大丈夫よと
優しく
風が振り返ってほほえんだ
『夢』
ステージの上にひとりの少女
客席には私だけ
スポットライトの輪の中に立ち
少女は私に向かって言った
おばさんは探しているのでしょ
少女が一歩前に出ると
ライトの色が少し白くなった
おばさんがわたしみたいに幼い女の子だったとき
何を見たかおぼえている?
それだよ おばさんが探しているものは
だから よそを探したってみつからないよ
少女はそう言うと光の輪の中にしゃがみこんだ
両膝をかかえ小首をかしげて
問いかけるように私の目を見た
そんなこと言われても困るわ
何も覚えてなんかいないわ
どうしたらいいの?
私はしくしく泣き出してしまった
おばさんは今幼い女の子になっているのよ
わたしみたいな
だから泣かないで
もうすぐ見えるから
探しているものが
そう言うと少女はすっと立ち上がり
ステージは暗転して
私は夢からさめた
『しあわせ』
「し」んじあえる友がいること
「あ」したを待つ勇気があること
「わ」たしは一人ぼっちだと思っても
「せ」いいっぱい生きていくぞと心に決めること
『夕暮れ』
太陽がオレンジ色に輝いて
帰り支度を始めると
やあお疲れさまと
海の表面が明るく光る
少し立ち話をするように
空の低い所で止まる太陽
まん丸く鮮やかに
素敵に
なごりを惜しむように
照り返す海
今日もいろいろありましたね
いや全く 全く
じゃそろそろ行きますから
ええ さようなら
さようなら
太陽がふうっと吐息をつくと
赤らんだ空は
青くもなって
灰色になり
やがて光を失って
海はゆっくり眠りにおちる
おやすみなさい
また明日
つぶやくように波がゆれる
『おにぎり』
しわくちゃの小さな手で
作ってくれた
大きすぎるおにぎり
形は悪いし
すぐにくずれる
でも
百の言葉より
千の言葉より
力をくれた
『初夏』
あなたと出くわしたね
何から何まで
ずいぶん違っているけれど
出会ってしまったね
あなたの道が偶然に
わたしの道に交差しただけ
またはその逆
でもそのおかげで
あなたの道に咲く花が
美しい色彩を届けてくれた
どこからか
初めて聞く歌も
風にのってやってきた
交差するたび豊かになる道
あら!と驚いて立ち止まるたび
新しくなる不思議な道
だから心から祈ります
あなたの道の両側に
新緑が輝いて
歩いていくあなたには力が増し
また次の交差路まで
元気に満ちて行きますように
あなたのその少女みたいな顔が
みずみずしい光の中で
何度も何度も
幸せにほころびますように
早春
待つことができるというのは
すてきな力だ
だってそこには
何かに対する信頼があるのだから
たとえそれが錯覚かと思えるほど遠い
遠い調べであっても
こんなにも長い間
それを知らずにきた
むやみに答えを求め
決着させようとしてきた
自分勝手な決着でしかないのに
そうしないと前に進めなかった
待つことは
長いようでも
命より長く待つことはない
少しは軽率な口を閉じ
目を閉じ
耳を澄ませなければならない
そんな風にして
きっと届くはずの
うっかりすると聞き逃してしまう
やさしい
やさしい調べを待ちたいと思う
早春の日
ねえ
負けないで
あなたは何も悪くないのだから
身体が弱くなっていても
心が疲れてしまっていても
どうぞ
しおれないでいて
あなたと同じ
無数のわたしたちがいる
木枯らしに震えるわたしたちは
あなたの仲間
あなたの味方
そのことを
あなたが強く感じてくれたらと思う
ほんとうに
空のうた どこまでも青く広がる空は ときにすっかり表情を変える 濃い灰色にたれこめて大雨を降らせ 雷鳴をとどろかせもする それでもやがて終わりが来て 空はふたたび光に満ち なんと爽快な青さでわたしたちに微笑むことか そんな空から あろうことか砲弾が降り注ぎ 爆弾が落ち やわらかく温かい人々のからだを 血まみれにし 硬く冷たく変えてしまう 人々は涙も枯れ 心には闇が棲みついてしまうだろう でもそれは決して 空のしわざではない 空は泣き叫ぶ人間を 見たくはないはずだ 舞い飛ぶ鳥たちに そっと悲しみをうちあけたはずだ 夕焼けの色に染まりながら 深いため息をついたはずだ ため息のあとで 漆黒のベールに無数の星たちを輝かせ きっと明日こそ 乱暴な人間たちが空を穢(けが)してしまわぬようにと 祈ったにちがいない
人々の声 声が聞こえる 戦争で無残に命を奪われた 数えきれない人々の声が聞こえる 決してくりかえしてはいけないよ こんな愚かなこと こんな悲しいこと わたしたちの命を無駄にせず 平和な世を生きるのだよ どれほどの笑顔が どれほどのぬくもりが どれほどの愛が どれほどの夢が とりたてて何ということのない かけがえのない 暮らしの中にあったことだろう 声はやさしさに満ち 後の時代を生きる者に ただ希望だけをたくしてくれる 間違いをくりかえさないようにと 静かに語りかけてくれる そして私たちには 大きく重い責任がある